おっちょこちょいの思考回路を紐解くSP

根っからのおっとこといだ。
あっ、かんでもた。
根っからのおっちょこちょいだ。
おかげで今日は、獅子てんや・瀬戸わんやの忙しさだった。
いつも通り、授業へ行く。
そして気づく。
筆箱がない。
いかん、どうやら疲れているようだ。
深呼吸して鞄の中を確認。
筆箱がない。
気づかなかったふりをして、一度鞄を閉じる。
そぉ〜っと鞄を開けてみる。
筆箱がない。
どうやら、自主休講で自宅待機らしい。
勝手なヤツだ。
仕方ないので、先生に借りることに。
授業開始直前、おもむろに先生に近づく。
「先生、筆箱忘れたんで、書くものを貸してください。」と、俺。
先生は胸ポケットのボールペンを取り出し、試し書き。
「いやぁ、さっきインクが出なくなったんだよ。」
ずこっ。
先生は自らの鞄をあさりながら、とどめの一言。
「書くものこれしか持って来てないんだ。」
どんがらがっしゃーん。
授業に書くものを1つも持って来ないなんて、あんた、それでも教授かよ。
とか、自分の非を棚に上げて、思ったり思わなかったり。
ともかく、「取りに行ってきます」と罵詈雑言を浴びせかけて、BOXへ走った。
俺は走った。待っててくれ、セリヌンティウス
BOXの前にいたのは、セリヌンティウスではなく、グリズリーだった。
いや、正確にはグリズリーのような目をした後輩、いや、やっぱグリズリーだった。
ウィリー・ウィリアムスの如く、グリズリーと戦った。
一瞬で勝敗は決した。決まり手は、権力。
ボールペンを手に入れた。
折り返して、教室へ走った。
途中で気づいた。
書かれるものがない事に。
折り返して、再びグリズリーと対峙。
BOXの鍵を奪い取り、紙を手に入れた。
折り返して、教室へ。
1号館の4階は遠い。
それでも、走った。
のど鳴り、肋骨骨折を抱えて走ったバトルハートのように。*1
人間機関車と呼ばれたエミール・ザトペックのように。*2
結局、15分遅刻で授業を受ける。
こ、これが、夢にまで見た勉強というやつなのか。
まばゆいばかりに後光が差してやがるぜ。
とか、思わなかったり思わなかったり。
授業は何事もなく、終わった。
そして、僕の戦争は終わった。
それは、突然やってきた。
帰ろうとした矢崎滋、もとい、矢先の出来事だった。
鞄を開けると、そこにあるのは黒革の手帳。合皮。
書くものも書かれるものも備えている。
「ここにあるじゃんけ!!」と、ワケの分からないツッコミを一人でして、そそくさと帰途につく。
あてどもなく、モンキーで走った。
渡辺真知子にそっくりのおばちゃんを見た。
クリソツだった。
ロボットのようなお婆ちゃんを見た。
くいだおれ人形のような正確さで、車道に向かって、延々と左腕を上下させている。
察するに、タクシーを止めようとしているらしい。
しかし、全ての車に向かって手を上げていた。
彼女の頭の中では、「車=タクシー」の図式が出来上がっているのだろう。
はっ!もしや、消しゴムかけられているんだろうか。
スクーターに乗った女の子を見た。
運転しながら、両肘を開いたり閉じたりしていた。
察するに、脇の汗がすごいんだろう。
必死で乾燥させているんだな。
はっ!もしや、ダチョウ倶楽部に入りたいのか?
はっ!そこから、電撃ネットワークに入るとか?
はっ!もしかして、南部さん?
女の子が漕ぐ自転車に2ケツする男の子を見た。
高校生だろう。
女の子に漕がせて、自分は楽している。
将来、ホストだ。
そんなことよりも、目をみはったのは、男の子のケツの下。
荷台の上に敷かれているものである。
座布団。
それも、寄席の高座で使うような、お坊さんが敷くような、ガッチリした座布団。
色は、ビビットなオレンジ。
そのチョイス。
さぞかし名のある武将に違いない。
世の中はツッコミどころ満載だ。
ちなみに文中で出てきた「くいだおれ」。
食い倒れ、杭倒れ、両方の意味がある。
大阪は昔、水害が多かったから、いくら杭を立てて、堤防を作ってもすぐに決壊したんだ。
若い子はあんまり知らんかもね。
お豆知識として。
亀の甲より年の功。
鮫の肌より桃の尻。
ってヤツですか。
言いたいだけやな。うん。